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第6回むつき庵はいせつケア実践報告会(2015年10月17日)の前日、富山県から参加された青木謡子さん、
松本美代子さん、荒川理江子さんと座談会を開きました。(実施日 2015年10月16日)
青木謡子さん (富山県朝日町民生児童委員富山県・医療法人社団健心会 坂東病院 看護師)
松本美代子さん(富山県・医療法人社団健心会 坂東病院 看護師)
荒川理江子さん(富山県・医療法人社団健心会 坂東病院 看護師)
―― 明日は第6回はいせつケア実践報告会ですが、この数回の報告会の傾向として、職場ではおむつフィッターとそうではない職員さんが一緒になって事例に関わっているよ。改善例になってきたよ。という報告に変わってきています。以前は職場で孤軍奮闘するような姿が見えていたので、この変化は大きいと思っています。皆さんはご自身の職場におけるおむつフィッターの活動について、どんな実感をお持ちでしょうか。頑張ったから喜びが得られたというよりは、広がって行って喜びが得られているほうがいいかなとも思います。あるいは富山と京都とのつながりとか。距離感とかいったことについて、お話しください。
浜田きよ子 いろんなことは気にしないで本音でやりましょうね。
松本美代子さん 北陸ではまだ、おむつフィッターのなじみは薄いです。でもおむつフィッターはこうだよというPRは少ないですが、青木さんが地域の民生委員をされていて、そちらでいろいろな催し物、講習会があるので、じわじわと認知されていっているように思います。たまたま私が担ぎ出されておむつフィッターの話をしたことがありました。排泄に関わることについてはみな知らないことが多かったです。私たちは病院では医療用語を並べてやってきたけれど、高齢の方を前にして、その医療用語は通じない。
おむつフィッターって何のことから始まって、かっこ良い言葉ではなくて、私の母のように、失禁って何?おもらしって何?ということから話ができるようになっていく。
(第6回実践報告会では、医療用語を平易な言葉に置き換えながらはいせつケアを説明するという試みを発表されました)
松本美代子さん 富山で話をしている時に、おむつに関して誰に聞いて良いのかわからない。ということを前提として共有し、その改善策を皆で集まって相談しました。その中では、ドラッグストアのようにおむつを販売している店に行って、特売のポイント数倍デーの時に、ボランティアで売り場で相談に乗ってみようか?とか話し、これは楽しかったです。
まだ準備中ですが、出前講座みたいな感じも想定しています。
――ご自身の職域を離れて展開している活動ですよね。所属する組織や職場を離れてもやらなければならない、というのはどんな使命感があるのでしょうか。
青木謡子さん おむつトラブルに関していろいろなことがあります。誰に聞いて良いかわからない。たまたまそういう感じで依頼を受けました。
――皆さんはケアにおいて相手の弱い部分にも近づいていきますし、おむつフィッターの勉強もされます。それは、上司に言われたからしているのか、それともご自身でやらなければならないとひらめいたのでしょうか。
青木謡子さん 私は公的病院にも勤めました。そこではおむつ交換は少なかったのです。短期離床が多く、長期入院者が少なかったので、おむつからの漏れが目立たなかったのです。次の職場ではおむつから、便が漏れる、おしっこが漏れる、ということが頻発しました。私も見たことがない、おむつを上へ上へと重ねづかいをするケースもあり、なぜこれほどしっかり重ねているのに漏れるんだろうか?これは完ぺきなはずなのに。と思っていました。
その時に新聞におむつフィッター1級の方の記事が掲載されていて、「自分が求めているのはこれなんじゃないか」と思いました。年も年だし、今ならできるかも。と思ったのがおむつに対する原点です。
患者様の漏れを改善できるということとともに、「重ねて使っているのになぜ漏れるんだろう?」という疑問を解決する良いタイミングでした。とにかくこれが不思議でした。
青木謡子さん むつき庵に来てショックだったのは、おむつの着用の仕方と排尿体験です。
着用については、浜田先生の提唱されている方法で着用するときちんとおさまり、両足が楽に動く。これはショックでした。
そして、おむつを履いて自分で排尿する体験です。おむつフィッター3級研修でこれをやりました。
今までは、いわゆる健常な人はおしっこがすぐに出ると思っていたのですが、出ない。本当に出ない。こんな学びをするとは思わなかったです。これが原点でした。
普通の日なら夜中に1度くらいはトイレに行くのですが、この日は朝になっても出ない。水の音を聞けばつられて出るかと思って水を流してみたり、トイレにしゃがんでみたりしても出ない。お腹を見るとパンパンに張っています。したい、出したい、という思いが強くなっていくのに出ない。
出したいと念じてようやく出そうになったので、ベッドで寝てみると尿意が止まる。
結局はおむつを外してトイレで排尿しました。
2級研修の時には、3級時のこの体験があったので、「ビールをたくさん飲めば出るかも」と思って実際にたくさん飲みました。でも出ない。姿勢を変えても何しても出ない。
今までは、私自身が「おむつを履いているんだから、おむつの中ですればいいわよ」と患者様に言っていた。相手のことを見てなかったのかと思いました。それで、自分がおむつの中ではできない。ということを知りました。
「人はおむつで始まっておむつで終わるんだ。これは決して恥ずかしいことではない。でも、どうしたらその人に合うおむつの使い方ができるのかは考えなければならない」と思いました。
自分が民生委員をしていますので、相談時には尿臭がすごい人がいます。でも言えない。向こうも私が看護師だということは知っていて、打ち解けて話してくれます。
直接は聞けないので、「最近寒くなったけれどトイレとかどう?」とちょっとずつ、遠回しに聞いてみます。そうしたら「実は出にくい」とか「夜中に何度も起きる」というような話をされます。その時には「今、おむつの勉強をしていて、1級をとらないと皆の前で話せないので、それまでは皆で勉強しましょう」ということをお話しします。
ちょうど、生き生きサロンという高齢者が集えるサロンを民生委員でやっていて、1級に合格したらここで話をすることを約束しました。
富山から見れば、京都よりも東京に行く方が便利です。でも最近は京都に行く方が楽しい。飴と鞭と言いますか、勉強は自分のためになって楽しいですが、飴も必要ですよね。なので最近は京都で前泊して、おいしいものをいただくようにしています。勉強が終わったらとんぼ返りして翌日から仕事を頑張る。皆でやれるからこれが楽しい。
松本美代子さん 医療職なので、これは勉強したら役に立つと思っていましたが、受けてみたら知らないことがたくさんありました。医療職でさえ理解度チェックが難しい。予習ができたらとか思ったこともあります。
とはいえ、事前に予習ができるようなテキストがあってもたぶんぎりぎりまで見る時間もないだろう。となると、今の仕組みで良いかなと思います。
一昨年、青木さんの実践報告会での発表を聞いて、今までは自分が頑張れと言っていたのですが「あんたの番だよ」と言われて、そうかと、火が付きました。
病棟でも公に京都で発表されるということを公表されているので、皆が「賞もらってきて」と言われてしまっています。
浜田きよ子 荒川理江子さんはおむつフィッター研修はいかがでした?
荒川理江子さん 悩みも多かったけれどこういうことにトライする幸せ。今までは看護師の勉強では看護師だけが話しています。でもおむつフィッター研修では看護師さん、介護士さんだけではなく、いろんな人が話します。そんな人たちと付き合ってみて違った意見を聞いて、ためになります。
こんなに異職種が集って話すのは珍しいですよね。
また、様々なおむつの種類を知ることで、自分の担当するケースでも、よりその人に合うおむつを探せるようになっています。皆でやっているので頑張れます。おむつフィッター研修では、班ごとの検討も楽しかったです。
青木謡子さん、松本美代子さん、荒川理江子さん
明日は元気に発表します。
Fin。
――Fin.
司会/本サイトウェブマスター
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