行動には理由がある。身体を真似ると、その理由が見えてくる。池松民朗さんの視線
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頭の後ろに手を置く姿勢。その理由を知る

後頭部に手を当てて寝ている利用者さんがおられます。 なぜか、多くの方が同じようなポーズをして寝ています。車いすなどに座った時も、この姿勢をする方も珍しくありません。

福祉用具研究会である日出会った男性の場合ですがこの方は、左半身マヒがある男性でした。右手は自由に動きますが、ほとんどの場合、右手は後頭部の下にいれて、休んでおられます。

みなさんの施設でも、このような姿勢で休んでおられる利用者さんがきっとおられると思います。それくらい、日常的な光景だと言えます。

枕が低いからなのかな?

立ったままでも枕が高い状況は再現できる

浜田きよ子さんとともに、介護施設における身体ケアを考えておられる、ボディバランスクリニック院長の池松民朗さん(身体の緊張と弛緩のバランスを整えることで様々な症例を改善させる身体の専門家)が、この男性の右手の秘密を解明してくれました。

普通に考えれば、枕が低いから、自分で手を入れて、さらに枕を高くしているのだろうという答えになりますが、違ったのです。

立ったままでも、この方と同じ状況を体験できました。

まず、下から枕で「頭蓋骨全体が突き上げられている」という状況を作ります。

これは、単純に、顔を前に突き出す姿勢です。枕が高いと、アゴだけではなく頭蓋骨全体が前に押し出されます。


それは、呼吸を楽にするための姿勢

 

この状況で、鼻呼吸と口呼吸を交互にしてみると、鼻では苦しく、口では楽なのが分かります。左半身マヒの人は右に向かって側臥位になっていくが、顔を右にねじっていくと、呼吸がもっと楽になります。さらに、肩を上げると楽になります。

 

鼻呼吸と口呼吸を比べる
池松民朗さんが浜田きよ子さんの「頭蓋」を前に押し出して、「高い枕」を再現する。この状態で鼻呼吸と口呼吸を比べると、口呼吸の方が楽だ

肩を上げると楽になる
ここからさらに肩を上げるともう少し呼吸が楽になる。このことが後頭部に手を当てる動作を誘発する一因。

 

しかし、ごろんと右に転がって行ってしまうので、右手で後頭部を押さえる。そうすると、肩があがるので、姿勢が安定しつつ、呼吸も楽になる――。

このように、呼吸が原因で、右手を頭の後ろに置く。という姿勢が出来上がっていることが分かりました。

 

興味深いことがいくつかあります。

この利用者さんのように、後頭部の後ろに手を入れて寝ている人を見たら、それは「現状の枕は、その人にとっては高い」ということのサインでもあります。

そして、この姿勢を続けると、より呼吸が楽になる姿勢を求めて、枕をもっと高くしたくなります。そして、右手はもっと奥に入り込んでいきます。楽な呼吸姿勢を求めて、身体がもっとねじれて行く。ということです。

 

では、どうすれば改善できるのか?まずは、使っている枕を低くする。バスタオルを何層にか畳んだものを枕のかわりにして、丁度良い高さを見つけ出す方法もあります。

もし、ベッドをギャッチアップさせていたのならば、それを浅い角度に直すか、角度をなくす。ということがあります。

仰臥位を安定させるために、ギャッチアップをしてベッドそのものに角度を作り、枕を高くして、曲がった膝の下にも枕を入れる。ということがよくあります。姿勢は作れますが、呼吸の面から見ると、息が浅くなる傾向もあるので、ケースバイケースで対応した方が良いと思われます。

また、心的な要因について考察することも重要です。家族が入ってくるから居室の入り口を大切にする。そのために顔を上げて入り口を見ておきたという心理も影響しますから、ベッドの位置を変えるということも一理あります。この方の場合は、家族の写真を患側に貼るという工夫をすると、健側である右に旋回する癖を軽減できる可能性があります。

移乗の時のベッドと車イスの位置関係もありますから、間取りを見直すことも一案です。

 

聖隷クリストファー大学社会福祉学部臨床介護福祉学科の奈倉道隆教授をモデルに、再び呼吸の実験をする
聖隷クリストファー大学社会福祉学部臨床介護福祉学科の奈倉道隆教授をモデルに、池松民朗さんが再び呼吸の実験をする。「頭蓋」を前に押し出して、「高い枕」に寝た状態を再現する。

福祉用具プランナーの松田ひろこさん(西陣おたっしゃ本舗)がお手伝い。
福祉用具プランナーの松田ひろこさん(西陣おたっしゃ本舗)がお手伝い。

枕が高いことによる呼吸のしにくさを回避するために、首を回す動作がはじまる。
枕が高いことによる呼吸のしにくさを回避するために、首を回す動作がはじまる。奈倉道隆教授の身体が楽な呼吸を求めて旋回する。

呼吸がしにくい状況を改善するには、手を上げることが必要になる。
呼吸がしにくい状況を改善するために、手を上げることが必要になる。



より専門的に学びたい人のために

 

――現場で役立つ知識。「リハビリの前に、爪をきれいに削りましたか?」――

池松民朗さんが推奨、実践されているのが、爪を削る。というケアです。

これは特殊な知識と経験が必要なケアで、後述のようにデリケートな問題を含んでいます。

以前は、爪削り(爪切り)は医療行為であり、看護師など医療従事者しか行えない。となっていましたが、今から7年前、平成17年7月28日に、厚生労働省の老人保健福祉局から各都道府県の介護保険担当に宛てて『医師法第17条、歯科医 師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について』と題した通達が出されました。

『医師法第17条、歯科医 師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について』の詳細は、下記のアドレスに記載されています。

http://square.umin.ac.jp/jtta/government/mhlw/iryokoui.html


通達の抜粋

 

 ――ある行為が医行為であるか否かについては、個々の行為の態様に応じ個別具体的に判断する必要がある。しかし、近年の疾病構造の変化、国民の間の医療に関する知識 の向上、医学・医療機器の進歩、医療・介護サービスの提供の在り方の変化などを背景に、高齢者介護や障害者介護の現場等において、医師、看護師等の免許を有さない者が業として行うことを禁止されている「医行為」の範囲が不必要に拡大解釈されているとの声も聞かれるところである。

 このため、医療機関以外の高齢者介護・障害者介護の現場等において判 断に疑義が生じることの多い行為であって原則として医行為ではないと考えられるものを別紙の通り列挙したので、医師、看護師等の医療に関する免許を有しない者が行うことが適切か否か判断する際の参考とされたい。

 なお、当然のこととして、これらの行為についても、高齢者介護や障害 者介護の現場等において安全に行われるべきものであることを申し添える――。

 

 医療行為にあたらない行為(原文:原則として、医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の規制の対象とする必要がないものであると考えられる)として、耳掃除や使い捨て式の浣腸などとともに、爪切り・爪やすり(本ページで提唱している爪削り)も明記されています。

 

爪切りに関する記述

 

 爪そのものに異常がなく、爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がなく、かつ、糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合に、その爪を爪切りで切ること 及び爪ヤスリでやすりがけすること――。

 

 福祉用具研究会は、池松民朗さんの爪削りを実践してきており、研究会出席者各氏にもその方法を指導・伝授してきました。

なぜかというと、上記のように法律で許可されていても、介護する側が、自分の爪を削ることで「怖さを知ること」「力加減を間違えたら痛いこと」を自分の体で感じておかないととても、利用者さんに対しては出来ないからです。

池松民朗さんの爪削りのノウハウはちょっと特殊な考え方で、その狙いとするところを引き出すためには、池松さんの直接指導を受ける必要があります。利用者さんの安全を守り、施設という職場の安全を守り、結果として介護する方々の仕事を守るために、直接指導という方法を取っています。テキストだけで物事をすべて理解できるというのは、とても危険な考え方ですから、本サイトではその方法については触れません。

池松さんの爪削りは、平成24年度下半期以降に、むつき庵が監修するオムツフィッター研修受講生のフォローアップ研修の一環として、提示されます。オムツフィッター研修自体が、「知識としてのノウハウに終始しない、考え続ける介護をする」という浜田きよ子さんの基本理念に基づいて運営されています。この感性を共有する方だけが受講されていますので、オムツフィッター研修受講生ならば、爪削りに関わるデリケートなケアの方法も理解、共有していただけると考えています。


池松民朗さん
池松民朗さん。相手の身体を真似ることが相手を知る糸口になる。

浜田きよ子さんも、動作の奥に隠れた真意を読みとろうと、悩みながら理解して行く。
浜田きよ子さんも、動作の奥に隠れた真意を読み取るために熟考を重ねる。介護にとって、考えることはとても重要な要因だ。

 

オムツフィッター研修に関する情報は、むつき庵ホームページをご参照ください。

むつき庵ホームページはコチラ→

 

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本ページの制作 監修:浜田きよ子 執筆:本サイトウェブマスター

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