おむつフィッタークラブ初代 代表世話人、小林貴代さんとの対談。
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小林貴代さん×浜田きよ子 対談 『おむつフィッタークラブ設立』『おむつ検定開始』

小林貴代さんとの対談
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おむつフィッター研修3級から先に進まなければ

小林貴代さん
写真:小林貴代さん
作業療法士・Kobaレディースクリニック理事・森ノ宮医療大学非常勤講師。おむつフィッタークラブ設立にあたり、初代代表世話人を引き受けていただいた。

浜田きよ子 小林さんはおむつフィッター3級検定は、いつ受けられたのでしょうか?

小林貴代さん あらためて見返すと、2008年。今から6年前のことでした。

浜田きよ子 当時はどのような経緯で、おむつフィッターを知ったのですか?

小林貴代さん そこの部分から、もう既にえにしを感じるのですが、むつき庵で最初に1級を受けられた方が私の知り合いでした。名刺交換をしたら名刺の裏におむつフィッターと書いてあったので『え?これは何?』とたずねたのがはじまり。そこで結び付いたんです。

浜田きよ子 そこで受けようと思われたのですね。そもそも小林さん自身は様々な資格もお持ちなのに。

 

小林貴代さん 実はもともと、福祉用具に興味があってやらせていただいていたんです。排泄はおむつの数が多すぎるのと、自分自身が現場で関わる機会もなく、言ってみれば適当に済ませていた分野でした。当時主人のクリニックがようやく開業した時期も重なり、自分の時間も生まれたので、今まで受けられなかった研修をたくさん受けていこうと思ったんです。その第一弾がおむつフィッターだったのです。

 

浜田きよ子 3級を受けられて、今も繋がっている同期は?

 

小林貴代さん 堺谷珠乃さんはじめ、各級の受講時の同期がいます。

 

浜田きよ子 3級から1級までは、わりととんとんと進まれたのでしょうか?

 

小林貴代さん そうなんです。2年後の2010年には1級を受けることができました。

 

浜田きよ子 きっかけとなった3級の感想は?

 

小林貴代さん 浜田先生は、排泄は知れば目から鱗が落ちるとよく言われるが、その状態が起きました。本当に、入り口に立たせていただいた。用具だけ知りたかった自分の動機がありましたが、それではいけないと思わせていただいた。そこから2級、1級と進まなければいけないのだということがわかったのです。

 

浜田きよ子 小林さんは作業療法士としてベテランだし、学校、現場ともに教え子がたくさんいる。その人がたまたま私たちの研修を受講してくださり、しかもそこで入り口に立ったようだという感想を持っていただいたというのはありがたい話です。私も、研修をするなかで、ケアに対する考え方がよりいっそう変わってきました。

最初は、排泄ケアというものは、ケアを受ける人の気持ちに左右するし、ケアをする人にとっても介護負担に大きく影響するから、そこを変えていきたい。そこが変わることで、お互いに良いだろうというのが素朴な出発点でした。それで、多くの受講生の皆さんに出会って皆さんの論文を読んでいくなかで、ケアは正しい何かがあるわけではない。ケアは、ケアを受ける人とする人の間にあるから、その人をきちんと見ていかないといけない。ということを重視するようになりました。研修の方向性もこのようにして変わっていくのも皆さんのお陰だと思っています。

 

エンドレスな学び

 

小林貴代さん どんどん自分の中で変わっている、進化しているのは感じます。今まで専門職にあぐらをかいていた自分がいて、指導する。という目線があった。自分ではそうではないと思ってはいたが、やって来たことを振り返ると、指導だったと言えます。その指導も、今から思えば、根底の話ではなくて小手先のテクニックを伝えてしまっていた。ということを感じます。

私たちは排泄ケアを介してですが、その人の生きざまに繋がる、その深さ、面白さについてはこれはエンドレスだと思いました。むつき庵の研修を受ければ受けるほど、エンドレスだと知らされてきたんです。

 

浜田きよ子 おむつフィッターさんが増えてきて、むつき庵のお手伝い組織が必要だった。むつき庵の組織はあまりにも小さく、実践報告会、バリアフリー展など新しくやることを考えるときには、一緒にやってもらえる人が必要だった。そういうときには、小林さんは気持ちよく名乗り出ていただいた。ありがたい存在です。

 

小林貴代さん 思いを形にしていくことが社会的にも必要なのだ。ということが、むつき庵を通じて感じました。思いとか、気持ちはみんな持ってるのですが、しかし、実際に事業化するとか、研修会を立ち上げるとか、そこから波及した命や介護を考える、本当の研修がなされる。というのはあまり他では出合ってこなかったことです。

テクニカルな内容、技術研修は結構あります。むつき庵はそうじゃない、一緒に考える、哲学的な要素を持つ場ですから、そこに関わることで自分にないものを補えるのではないか。と思ったのです。そういう場であると感じます。他のおむつフィッターさんで、チーム関西で一緒にやってくれている方々も、そういう響き合う部分はある。その部分に同じものを持っている人が集まっている。だから、『あれやろうか』というと『しよか』と即応する。その縁の力強さを感じます。

また、ここに集うこれは人数が多くなればなるほど、大切なものは守っていかないといけない。と感じるようになってきました。自分達が楽しむのはもちろん大事ですが、その楽しみを共有する仲間を増やしていって、まだその楽しみを知らない人を掘り起こしていかないといけない。その部分でのお節介屋さんも必要かと思います。

 

浜田きよ子 一般的には技術研修が多いということについて。形を覚えると満足感があります。だから私も講演をするときに、ある種のテクニックを伝えたら、面白いと思ってくれる人が多くて、それはそれで大事ではあるのですが、私が伝えたいのはそこかと言われると、違うと答えるしかないのです。

人の事をどう考えていくか、ここが大事。自分が向かう他者は、百人百様で人格も違う。好みも病気も違う。ひとつの技術でそれをカバーしケアしようとするのは無理があります。言葉ひとつにしても、方言があったりする。全部が切り売りされていて、『人にどう接するか、その形』『どう移乗するか、その形』となっている。その人を徹底的に知るなかで、この人にはどう言葉をかけたら良いか、どう移乗したら良いかということがきっと少し見えてくるのに、ケアされる主体がかなり不在ななかで、私たちはケアを考えてきた。そこに気づいてもらうのが、私の研修の大きな狙いのひとつです。

その狙いを面白がってくださる人が受けてくれるのは嬉しい。むつき庵が10年やってこれたのは、そういう人が伴走してくれたから。それは小林さんはじめ、皆さんのお陰です。

その人の縁をもっと作っていきたい。というのが、今回のテーマであるおむつフィッタークラブです。そのクラブの代表世話人の統括を小林さんにお願いしました。

 

おむつフィッタークラブ

 

小林貴代さん 恐縮しきりです。代表といってもみんなでやるものですから。卒業した後に、いろんな研修、繋がりが必要。おむつフィッター研修で基礎を固めて、まだ何かが足りない。まだ学ばなければならない。という人たちの要望を受けていく。もう受講生が4000人になろうとするのですから、その人たちのニーズに段階的に応じなければならない。ちょっと勉強してそれでよかった人と、1級を卒業して、卒後の研修も色々受けて、さらにその先がほしい。という人もいる。そういう皆さんが求めているニーズを整理しながら、考えていけば良いと思っています。

浜田きよ子

浜田きよ子 今年中に、おむつフィッター有資格者は4000人を越えます。そこには、勉強はいっぱいしたからもういいよ。という人と、まだまだ学び、繋がっていたい。という人もいる。その思いにこたえられるように広い視点で学びあえる。親睦を図れる。そしてなにより、助け合えたら良いです。おむつフィッターさんたちは、時にはいろんな形で残念さを抱えることもある。そこでは悩みを聞いたり、ゆっくり話をするということも必要になるでしょう。

モノも提供できたら良いのかもしれないが、そんなことも必要に応じて、広がっていくクラブだったら良いと思う。

 

小林貴代さん 私もどうしても頭が固く、いろんな協会のお仕事をさせていただくと、発起人、会則、というものから入っていく自分がいる。そうではないと言われたときに、なんだそういう形もあったのかと気づかされた。

 

浜田きよ子 会則は必要ですがそこに縛られたら本末転倒です。会則は組織をうまく運営するため、そして一応は、お互いに確認し合うためのものです。円満に行くのが前提。

小林さんは、いろんな人に教えてこられたので、一定の距離をもって物事を見ることができるでしょう。

小林さんはクラブでどんなことをしたいですか?

 

小林貴代さん 小さな自分がいろんな人にご縁をいただいている。まさに出会いが財産だということを、皆で共有したいです。内容も皆で考えながら、できることを確実に積み上げたい。思い付きの単発研修ではなく、その人に影響を与えられる事をしていきたいですね。

 

おむつ検定

 

作問委員会の打ち合せ
むつき庵内で、『おむつ検定』の作問委員会の打ち合せ

浜田きよ子 クラブでは『おむつ検定』もはじめます。

 

小林貴代さん 検定の構想は、驚きました。

 

浜田きよ子 一番の思いは、ドラッグストアで買ったおむつがうまく使えない、サイズが合わない。テープ止めがほしいのにパンツ型を買ったとか…。

 

浜田きよ子 それは誰の責任かというと、買う人の責任でもあるし、同時に、相談を受け販売した人の責任でもあります。おむつについて、あまりにも知識がなく、買い手と売り場、使用者と提供者は混乱します。

おむつフィッター研修は考え方など様々なことをテーマにしています。おむつを扱う人は生活全般について考え助言することが無理でも、せめておむつだけでもわかって欲しい。

研修を受けてくれない企業でも、せめて関心の領域で簡単に受けていただける手段として検定を考えたんです。ドラッグストアの店員さんが『私はおむつ検定を持っています』ということで、ユーザーであり買い手である人たちが、安心して相談できるようになってほしいのです。小林さんは検定についてどう思われましたか?

 

小林貴代さん 率直に、安易に問題に答えて等級を授与するのは抵抗がありました。しかし、作問委員会の皆で問題を考えている過程で、我々の作問委員会がそうはさせないぞ。という意思で動いていることを実感しましたので、ああ、これはなんとかなるのかも。と思っています。英語や漢字の検定のように、答えられたら良いのではなく、受けることによって、私が3級を受けたときと同じく、次は?となったときに、先がある。学べる。その手掛かりを示すことができます。

おむつフィッターの資格を持ちながら、現場での課題解決に至らない人たちもいます。悩みを抱えたままの人たち。そういう人が困り、バーンアウトしたりする。そうならないようにするもの、検定やクラブの役目です。

 

浜田きよ子 検定はそういう入り口になりますね。

 

小林貴代さん むつき庵の存在は、みな、好きなんです。京町屋を改修した建物で、おむつフィッターの皆も、『むつき庵に帰る』という言い方をする人も少なくないです。おむつフィッター研修が実家の基礎で、自分達は羽ばたいて、何かあったら帰ってきて確認して、また飛びだつ。そんな意味での実家ですね。

 

浜田きよ子 ここがみなの実家なら嬉しい。クラブ、お互いに一生懸命やっていきたいです。よろしくお願いします。

――Fin.

取材メモ:2014年9月、京都に於いて実施。

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